『悪妻身につかず』@百人町劇場白萩ホール(ZERO COMPANY)

小説家の菊池寛は無類の人情家であった。 (中略)そんな人の良さに付け込み、傍若無人、無礼千万な態度をとり続けた女がいた。 その名は初音という。 初音は菊池の後添えとして迎えられたが、若いだけが取り柄の悪妻であった。 この初音が更に凶悪な姉の静香と謀り、菊池の財産奪取を企てる。 そして、この悪女たちに立ち向かう菊池の前妻、霧子。 果してその結末は如何に...。(チラシより抜粋)

6月20日18時からの公演を、4列目舞台向かって右端で観劇。 昨日書いた「西武新宿駅方面に行く用事」というのは、これのこと。 百人町劇場白萩ホールは、50人ぐらいで満員御礼になる、非常に小さな劇場でした。 この劇団の専用劇場なのかな?
3月31日の日記で、キャラメルボックスの公演について、結構批判的なことを書きましたが、彼らの舞台は笑える要素がふんだんにあるので、何だかんだ言っても最後まで飽きずに観ることができます。 この舞台は、小劇団の悪いところを凝縮したような、かなり辛い出来でした。 チラシをみたときは、おっ面白そうと思ったんだけどね...。 主な登場人物は、菊池寛、初音、静香、霧子、芥川龍之介川端康成、サヤンプー(女中)の7人。以下、箇条書きで雑感を。

  • 前説いらね。 小学生の学芸会以下。
  • 裏方が騒々しい。
  • 役者陣の発声や演技は全員問題なし。 菊池役の山下祐市、初音役の秋月美江、静香役の夏花、芥川役の石原茂史の4人は特に良かった。
  • ただ、川端役の人の関西弁は酷かった。 川端が大阪出身であることは無視して、標準語で構わなかったと思う。 ハリウッド映画の登場人物は、全員英語が堪能だったりするし。
  • セットや衣装、小道具も、小劇団の割にかなり頑張っていた。 ほぼ全員履いていた茶スリッパは気になったけど。
  • オープニングは非常にいい感じで期待させたが、開始10分過ぎあたりから中弛みと破綻を繰り返し、悲惨なことに。 途中、芥川と川端の2人が突然シャーロック・ホームズの話をし始めたから、ミステリになるかと思ったのに。
  • この舞台の最大の問題点は、悪妻であるはずの初音が全く悪妻にみえなかったこと。 悪妻らしいエピソードは全くない上、悪妻悪妻と喚く霧子やサヤンプー、隣人が非常識人なので、全く説得力がない。 チラシには「若いだけが取り柄」なんて書いてあったのに、料理上手いし。
  • また、菊池が初音に惚れた理由は頭の良さと言っている割に、初音が賢くみえない。 初音の企てた菊池の財産奪取方法は、杜撰かついきあたりばったりで、つっこみどころ満載。
  • 霧子が、前夫のことを心配する理由がさっぱりわからん。 つうか、霧子は「代表して、皆の意見を言いにきました」なんてのたまっていたが、初音をなんとかしろ菊池が可哀想だ、なんて前妻に注進する奴なんているのか?
  • そもそも霧子は何故菊池と離婚したのか触れられなかったので、菊池の人柄故、 霧子側に問題があったとしか思えず、霧子の台詞に全く説得力がない。
  • サヤンプーの立ち振る舞いこそ、傍若無人であまりにあんまりなのに、誰も不満をいわないのが謎。 そりゃ初音もイライラするって。
  • 暗転前、毎度毎度格言・ことわざを言うのは勘弁してくれ。 昔ウラ関根TVで紹介されたビデオを思い出した。
  • と思っていたら、途中から言わなくなった。
  • 「朝は4本足、昼は2本足、夕方は3本足の生物は?」 その答えは超人だーー!(by キン肉マン
  • うわー出た、突然の天災(一応、ナマズが暴れているって前振りはあったけど)。 小劇団公演にありがちなパターン。 銃が出てきたら、本気で頭を抱えるところだった。
  • 関東大震災のとき、日本の軍隊と警察、一部民間人は「15円50銭と言ってみろ」と言った(イントネーションが違う人は、朝鮮人とみなされ殺された)のであって、「1円50銭」ではなかったと思う。
  • 結局菊池、芥川、川端である必要は全くなかった。